溶けた骨を取り戻し抜歯を防ぐ「歯周組織再生療法」とは?
重度の歯周病と診断され、「歯を支える骨が溶けてグラグラしている」「このままだと抜歯しかない」と告げられたことはありませんか?
かつての歯科医療では、「一度溶けてしまった歯槽骨(顎の骨)は二度と元に戻らない」とされていました。しかし現在では、失われた骨や歯周組織を外科的処置と再生材料によって回復させる「歯周組織再生療法」という選択肢が確立されています。
今回は、歯を抜かずに残すための高度な治療である歯周組織再生療法の仕組み、代表的な薬剤の違い、治療ステップ、メリット・注意点についてまとめました。
なぜ骨が再生するのか?再生療法の基本メカニズム
歯周病が進行すると歯を支える歯茎や歯槽骨である「歯周組織」が破壊されます。通常の外科手術(フラップ手術など)で汚れを取り除くだけでは、増殖スピードの速い歯肉(上皮組織)が先に骨の欠損部に入り込んでしまい、骨が再生するスペースが奪われてしまいます。
歯周組織再生療法では、以下の手法を用いて骨や歯根膜が再生する環境(足場とシグナル)を人工的に整えます。
-
再生誘導シグナル(サイトカイン・タンパク質)の投与:骨や血管をつくる細胞の増殖・分化を促す。
-
遮断膜(メンブレン)や骨補填材の設置:上皮組織の侵入を防ぎ、骨が育つスペースを物理的にキープする。
これにより、歯根表面に新たなセメント質が形成され、歯根膜繊維が張り巡らされ、歯槽骨が再生して歯のぐらつきが改善します。
代表的な再生材料:リグロスとエムドゲイン
現在臨床で広く使われている代表的な再生材料には、以下の2つがあります。
治療の流れ(一般的な4ステップ)
再生療法は、いきなり外科手術を行うわけではありません。お口の中全体の細菌数を減らす「基礎工事」を徹底した上で行われます。
メリットとデメリット(適応の限界)
メリット
-
天然歯を残せる可能性が高まる:重度歯周病で「抜歯」と診断された歯を保存できるチャンスが生まれます。
-
歯の揺れが収まる:骨が再生して歯根を支える土台が強化され、しっかり噛めるようになります。
-
歯周ポケットが浅くなる:細菌が溜まりにくい環境になり、将来的な歯周病の再発リスクを抑えられます。
デメリット・適応の限界
-
「水平的」に全体が溶けた骨には効きにくい:すり鉢状や縦に深く骨が溶けている「垂直性骨欠損」には極めて有効ですが、歯並び全体が平らに下がってしまった骨欠損への再生効果は限定的です。
-
外科手術が必要:全身疾患(重度の糖尿病、心疾患など)がある方や、ヘビースモーカーの方は血管新生が阻害されるため適応外となる場合があります。
-
骨が固まるまで時間がかかる:術後すぐに噛み心地が戻るわけではなく、数ヶ月単位での安静とメインテナンスが必要です。
費用
-
自費診療(リグロスまたはエムドゲイン、ブルーラジカル使用):66,000円(1歯あたり)同時手術での追加1歯44,000円
-
※当院では歯周再生療法時には厚生労働省認定の重度歯周病治療機器ブルーラジカルを併用し効果を高めます。
まとめ:抜歯宣告を受けても諦めない選択肢
「グラグラしているからもう抜くしかない」と言われた場合でも、骨の溶け方や残存組織の状態によっては、再生療法によって歯の寿命を延ばせるケースが存在します。
ただし、再生療法を成功させるための最大の条件は、術後も歯周病菌を増やさない「患者様ご自身の毎日のブラッシング」と「歯科医院での継続的なプロフェッショナルケア」です。骨の再生を検討したい方は、ぜひお気軽にご相談ください
参考出典・情報源
-
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
-
解説内容:FGF-2(リグロス)、EMD(エムドゲイン)、GTR法、各種骨移植材の臨床エビデンスおよび推奨度
-
特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会
-
解説内容:垂直性骨欠損に対する外科的アプローチ、適応症の判断基準と術後管理プロトコル
-
厚生労働省 e-ヘルスネット
-
解説内容:プラークコントロールの重要性、歯周外科処置および歯槽骨欠損への対応に関する公的情報
医療法人社団OWL 松井デンタルオフィス
歯を抜かない、非抜歯、予防歯科に強い歯科医院。




